「公に意見を表明したり、請願・陳情や提訴を起こしたり、政府・自治体の対応を求めて動いたりした人々を黙らせ、威圧し、苦痛を与えることを目的として起こされる 報復的な民事訴訟のこと」

Strategic Lawsuit Against Public Participation(直訳:市民の関与を排除するための訴訟戦術)は SLAPPという略語で有名である。
 

SLAPPは様々な訴因、例えば名誉毀損、誹謗中傷、業務妨害、共謀などで提訴される。
もともとこの言葉は1984年にこうした形態の訴訟の研究を始めた、デンバー大学のジョージ・W・プリング教授とペネロペ・キャナン教授が作り出した造語。当初、両教授はSLAPPの条件として次の四つの規準を挙げていた。


原典:'SLAPPs: Getting Sued for Speaking Out ' Pring and Canan. Temple Univeristy Press

(Ⅰ)政府・自治体などが権力を発動するよう働きかけること=(注)裁判所への提訴や捜査機関への告発など
(Ⅱ)そうした働きかけが民事訴訟の形を取ること
(Ⅲ)政府・自治体・企業ではない個人や団体を被告として提訴されること
(Ⅳ)公共の利益や社会的意義にかかわる重要な問題を争点としていること

 

典型的なSLAPPでは「ターゲット」(プリング・キャナン教授の用語)にされるのは個人または市民団体、 ジャーナリストであり、彼らが訴訟の「被告」にされる。
これらの個人や市民団体は、ただ単に憲法で保証された権利を行使する動き(デモ、ビラ配布、新聞への寄稿、記事の執筆など)をしただけで「不法行為の疑いがある」として「ファイラー(filer)」=原告に民事訴訟を起こされる。

SLAPPが標的にする社会問題は多岐にわたる。
特に多いのは不動産開発や公人の行動、環境破壊や公害・汚染。
そのほか反対の強い土地利用などについて公に意見を表明した個人や市民団体が標的にされる。
消費者や労働者、女性、少数派(人種、性的マイノリティなど)の権利のために公的に働く個人や団体が狙われることも多い。

 

これまでの例では、SLAPPを起こされた被告は合法的としか見えないような行為によって訴訟を起こされている。
例えば、請願のための署名を集めて回るとか、地元の新聞に記事を書く、あるいは投書をする、パブリックな集会で発言する、違法行為を報道したり、通報したりする、合法的なデモに参加するなど。

 

プリング・キャナン教授の定義を元に、SALPPの条件を箇条書きにする。

① 刑事裁判に比べて裁判化が容易な民事訴訟。
② 公的問題が公の場所での論争になっている。
③ 訴訟の原告・被告はその公的論争の当事者である。
④ その公的問題について公的発言をした者(主に批判者や反対者)を標的に提訴される。
⑤ 提訴する側は、資金・組織・人材などの資源をより多く持つ比較強者。
⑥ 提訴される側はそれらの資源をより少なくしか持たない比較弱者。
⑦ 提訴によって、金銭的、経済的、肉体的、精神的負担といった裁判コストを被告に負わせ苦痛を与える。
⑧ こうした提訴による苦痛を与えることで、原告は被告の公的発言を妨害、抑止する。
⑨ 訴えられていない潜在的な公的発言者も、提訴を見て発言をためらうようになる。
⑩ 提訴した時点で批判者・反対者に苦痛を与えるという目的は達成されるので提訴側は裁判の勝敗を重視しない。