オリコンvs烏賀陽弘道裁判

 

● 提訴

2006年11月17日

 

● 原告(訴えた側)

ヒットチャート会社「オリコン」
〒106-0032 東京都港区六本木6-8-10 STEP六本木西3F 代表取締役 :小池 恒

代理人弁護士:笹浪雅義 中島秀二 高村健一


〒100-6312 東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル12階1201区 卓照綜合法律事務所
電話:03-3214-5551 / FAX:03-3213-6582

 

● 被告(訴えられた側・SLAPP被害者)

フリーランス記者 烏賀陽弘道

※ 代理人弁護団 東京地裁段階(烏賀陽側敗訴):釜井英法団長 三上 理 草道倫武 松本はるか

※ 代理人弁護団 東京高裁段階(烏賀陽側勝訴):飯田正剛団長(飯田正剛法律事務所)日隅一雄 小川 朗

 

● 提訴の内容
ヒットチャート会社「オリコン」がフリーランス記者の烏賀陽(うがや)弘道を相手取り、名誉毀損で5000万円の損害賠償を請求して提訴

 

● 事件番号

平成18年(ワ)第25832号 損害賠償等請求事件

 

● 詳細
月刊誌「サイゾー」2006 年4月号に掲載されたサイゾー編集部執筆の記事「ジャニーズは超VIP待遇!?事務所とオリコンの蜜月関係」に引用された烏賀陽のカギ括弧内コメントだけ が名誉毀損だとオリコンは主張して、烏賀陽だけを提訴した。烏賀陽に取材し記事を執筆したサイゾー編集部やその発行元である「インフォバーン社」をオリコ ンを意図的に訴えから外した

 

● 裁判所の判断
(1)東京地裁(綿引 穰裁判長)’08年4月22日判決
「烏賀陽に名誉毀損の責任がある」として100万円をオリコンに支払うよう烏賀陽に命じた

 

(2)東京高裁
’08年5月2日、烏賀陽側が控訴。’09年8月3日、オリコン側が請求放棄を宣言。
オリコンが名誉毀損訴訟を「理由がなかった」と判決を待たずに「自己敗訴宣言」したため、烏賀陽側反訴は意味がなくなり、請求放棄。
和解が成立して終結。

オリコン烏賀陽間の訴訟はオリコン側の「自己敗訴宣言」で烏賀陽側の不戦勝に終った。

揖斐憲「サイゾー」編集長兼社長は、当該記事中の「烏賀陽の発言」部分が後述する小林副編集長の捏造(電話取材はしたが、記述された内容は烏賀陽が話した内容から大きく逸脱している)だったことを認め、烏賀陽に謝罪のうえ「利害関係人」として訴訟参加した。

小林副編集長、揖斐編集長の証言は録音のうえ東京高裁に証拠提出された。東京高裁は、2回の口頭弁論のあと、3人の裁判官のうち担当・黒津英明裁判官が10 席ほどの小さな会議室で双方の言い分を交互に(同席しない)聞くという「進行協議」を’09年1月から8月まで20回重ねた。

サイゾーは東京高裁から利害関係人として訴訟に自発的に参加。烏賀陽、オリコンへの謝罪と烏賀陽への金銭的補償を約束したため、3者間の合意になり「和解」という法的形式を取った。なおこの和解は東京高裁作成の和解案による職権和解である。オリコンへの請求放棄を求めたのは東京高裁であり、オリコンはこれを受諾。

一方オリコンは烏賀陽を誤った訴訟で33ヶ月間にわたって心身の苦痛を与えたことに、謝罪を頑強に拒否した。

自発的な謝罪もしていない。

 

● SLAPP性
(1) オリコン社は訴訟を恫喝目的に使ったことを公式に認めている
提訴した直後の同社ウエブサイト「ORICON STYLE」で「私たちの真意は損害賠償を要求することではない」「烏賀陽が事実誤認に基づいて長年にわたって誹謗中傷を続けたことを認め、謝罪するなら 提訴を取り下げる」と公表。損害賠償を求める民事訴訟を起こす一方で、「謝罪すれば提訴を取り下げる」と訴訟コストを負担することの苦痛と引替えに謝罪を 要求する取引を持ちかけている。
訴訟の目的が「名誉毀損による損害の回復」ではなく「烏賀陽に過ちを認め、謝罪するよう恫喝すること」と認めている。
民事訴訟を恫喝の手段にしたことを提訴した当事者が認めている例は珍しい。

 

(2)提訴の発端は烏賀陽の「取材に答えた」という公的発言である
烏賀陽は係争になっている記事の執筆者ではない。オリコンが被告にした烏賀陽は、係争になっている記事を執筆したサイゾー編集部 小林稔和副編集長の電話取材を受けた「取材源」に過ぎない。記事の執筆者ではない。取材・執筆した「サイゾー」編集部やそれを出版した「インフォバーン社」がいなければ、オリコンが主張するような5000万円もの損害は発生するはずがない。が、オリコンはサイゾーやインフォバーンを意図的に被告から外して烏賀陽を孤立させる作戦を取った。このため、烏賀陽は弁護士を自分で探し、その費用を自腹で払うなど、膨大な裁判コストを負担させられる窮状に追い込まれた。

 

(3) 過大な裁判コストの負担という虐待に烏賀陽は苦しんでいる
提訴前の2005年、烏賀陽の年収は約500万円だった。提訴翌年の2007年には230万円、2008年には180万円と年収は激減。裁判準備のために労働時間の半分を取られるためである。
さらに弁護士費用の負担が追い討ちをかけている。烏賀陽はこの資金の準備のために母親の老後の蓄えとしてた定期預金を解約した。
オリコンの提訴の意図がこうした金銭的な負担や肉体的・精神的苦痛を与えて屈服させ、自分の要求を通す目的であることは(1)のオリコン自らの発言で明らかである。

 

(4)オリコンの狙いは烏賀陽を沈黙させることであり損害の回復ではない
オリコン社は、烏賀陽が2003年2月3日号「AERA」に書いた「オリコンの独占去った後チャートはどう読む?」という記事も「AERAとサイゾー記事 は一連の不法行為」と主張している。AERA記事は民事時効を過ぎており、提訴できない。にもかかわらずオリコンは無理矢理訴訟にAERA記事を入れた二つの記事の共通項は「烏賀陽」しかなく、オリコンの目的があくまで烏賀陽を沈黙させることであるのがわかる。
AERA記事で烏賀陽はオリコンのチャート集計はその集計方法が通常の統計調査のように公表されていないことを指摘している。
またレコード会社がオリコンのチャートアップを狙って買い増しなどの工作を仕掛けることを指摘している。

しかし、オリコンのチャートが「信用性がない」あるいは「オリコンがチャート操作に能動的に関与している」などの記述はない。
しかし、小池恒オリコン社長はこの記事に憤激してAERA編集部に電話をかけ、担当の副編集長に30分以上怒鳴り続けている。オリコン社にとって烏賀陽の指摘は「世に出ると不都合な指摘・批判」であったことがわかる。

 

(5)オリコンには訴訟をしなくても、反論し、社会的評価を回復する手段がいくらでもあった
オリコン社のウェブサイト「ORICON STYLE」は 800万のユニークユーザーを持つ。また「オリジナル・コンフィデンス」という雑誌も発行している「マスメディア企業」である。もし仮にサイゾー記事の内容に不満や批判があったとしても、提訴に及ぶ前に自社のメディアで反論する場があった。
しかも、サイゾーの発行部数は5万前後なので、媒体として はオリコン社の方がはるかに大きな力を持っている。

また、提訴前にサイゾーや烏賀陽への抗議、訂正の申し入れ、反論掲載の申し入れはなかった。

「言論には 言論で対抗する」ことがいくらでもできたのに、まったくしようとした形跡がない。ここでもオリコンが訴訟を加罰(苦痛を与えるいやがらせ)の手段として 使ったことがわかる。

 

● そのほかの問題点
オリコン裁判は「SLAPP被害」であると同時に「報道被害」でもある。第一に、サイゾー編集部が烏賀陽に取材した内容を勝手に歪めて掲載したことが提訴の発端になっている。第二、インフォバーン社小林弘人社長は烏賀陽からの助力(弁護士の紹介など)の要請を一切拒否し、今日に至るまで無視している。つまり取材源を見捨てた。
これは新銀行東京裁判でテレビ朝日と講談社がSLAPP被害者の横山剛さんを取材源として守らず、見捨てた「報道被害」と同じ構図。
「サイゾー」が高裁レベルから訴訟に協力して証言するようになったのは、サイゾーがインフォバーンから分社してインフォバーンがサイゾーの「上司」でなくなり、その意向に従う必要がなくなったからである。